Wednesday, June 13, 2007, 01:25 PM
コムスンを巡る一連の事件(敢えて「事件」と言います)は、高齢社会真っ只中の我が国にとって小さくない出来事でした。高齢者に関連した福祉の計画づくりなどもお手伝いしている当社にとっても、他人事とは思えない、非常に重い課題を突きつけられたように感じています。
介護保険(制度)が始まる前は、一般に介護は身内がするものという認識でした(今でも地方によっては根強かったりしますが)。親の介護が必要になれば、子どもやその嫁が面倒を見る、というように、家族のなかで処理されてきた問題であると言えます。
しかし、高齢化により介護問題が社会的な課題として大きな位置づけを占めるようになるとともに、核家族化や少子化などにより、家族による介護も限界が見えてくる時代となりました。そのため、介護を家族ではなく、社会全体で担うようにすること、また、保険制度という、相互扶助、支え合いの仕組みとして取り組んでいくために始まったのが、介護保険というしくみ、制度なわけです。
介護の社会化とは、一方では介護ビジネスの本格化を意味するものでした。ボランティアによる介護では広がりは期待できません。あくまで商売として成り立ってこそ、増大する介護需要に対応できるというのはごく自然な考えであり、旺盛な意欲を持った事業者も現れるようになりました。
コムスンの件は、そうした商売の意欲があまりに行き過ぎた例であり、もちろん許されるべきものではありません。しかし一方で、こんなことも考えてしまうのです。
「では、介護ビジネスの望ましい規模や姿とは、どういったものなのだろう・・・?」
そう考えるのは、コムスンのような巨大な会社がある一方で、草の根に根ざした小さい事業所もたくさんあるのが、介護ビジネス市場の実態であるからです。
介護とは、大量生産の効かない、手作りの仕事です。一人ひとりに対応する必要がありますし、そのニーズもまた十人十色、一律ではありません。
だからこそ、小規模な事業所もきめ細かいサービス等で重要な役割を担っているのですが、一方で、小規模だと、どうしても効率的には悪くなってしまいます。スケールメリットを活かした効率性と、ニーズに的確に対応するための手作り感・・・、これをどのレベルで両立していったらいいのか。そこに非常に難しいテーマを感じてしまいます。私自身、小規模で非常に評判の高い事業所をいくつも知っていますが、その多くが、商売としてのうまみを半ば度外視した、運営者の熱意や忍耐でやりくりしているような印象を受けた覚えがあります。そうした形で、果たして今後も生き残っていけるのか?・・・、後継者は?・・・、持続的に継承されていくのか?・・・等々、小規模事業所の行く末もまた、案じてしまうのです。
マーケットですから、需要と供給は「見えざる力」によって、自ずとベターな方向に推移していくのかも知れません。しかし、マーケットの流れに任せつつも、介護市場におけるベストな姿とは何なのか、常に描き、その姿を共有しておくことも必要なのではないでしょうか。
コムスンについては、許されざる罪の一方で、24時間介護など、「功」の部分を評価する声も聞かれます。さまざまな問題・課題のうねりを抱えながらも、介護サービスは社会に不可欠なものとして受け入れられてきました。制度発足から10年、介護を巡る総括と展望を行うにはちょうど良い時期なのかなと、あらためて思う次第です。
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